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Ⅰ 人間と悪魔のハーフ
綺麗な若紫の色の瞳に、サラサラとした真っ黒な髪。
立派に生えている二つの角は彼の特徴であり、誇りだ。
胸元に付けているバッジに描かれているのは、獣。
その獣は真正面を向いており、こちらを威嚇しているような迫力がある。
足音を廊下中に響かせ、黒いマントをヒラヒラとなびかせる。
彼の目の前にあるのは一つの扉。扉の前で彼の足はピタリと止まった。
ノックをすると、中から「はい」という低い声が聞こえた。
「入るぞ」と声を掛けてから彼はハイレバーを手に取り、引いた。
シンプルな家具が陳列する部屋。椅子に座っているのは一人の青年。
ワイシャツに袖まくりをした姿で、紺色のベストを着用している。銀色の長い髪は一つにまとめており、口元に鋭い牙を生やしている。赤い瞳は全てを見透かすようなイメージを感じさせられる。両手には黒い手袋をはめている青年の名は、クロード。
「何の御用でしょうか、レオン様」
レオンと呼ばれた彼は、バサリとマントを翻しながら言った。
「外の空気を吸おうと思ってな。お前も付いてこないか? 書類整理をこなしているだけだと、疲れるだろう」
レオンはクロードの目の前に散乱としている書類に目を向ける。山積みになっている書類には、小難しいことばかり書かれていた。
「そうですね。ご命令とあらば、喜んで。準備が整い次第レオン様の自室に向かいますので、お待ち下さい」
フフッとレオンに微笑むと、クロードは机の片付けを始めた。
「分かった。待っているぞ」
そう告げるとレオンは扉を閉め、自室へと足を動かした。
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