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紅葉
この時期になると、子供のころに見た鮮やかな紅葉を思い出す。
あれはまだ幼稚園に通っていたころのことだ。
そのころの僕は体が弱かったせいか、しょっちゅう風邪をひいたりして幼稚園を休んでいた。
当時僕が住んでいたところは大通りの道沿いで、排気ガスもひどく、いつも咳き込んでいる僕をみて父も母も不憫に思ったのだろう。幼稚園の休みを利用して、父方の祖父のもとに僕を行かせたことがあった。
いまでもあざやかに記憶に残っている紅葉を見たのはその時のことだった。
祖父の家は都会から離れた田舎町の山の付近。いや都会からどころか人里離れた場所にあった。しかし山といっても小さな山で、子供が一人で遊んでも迷子になるような山でもない。危険な野生の生き物もいない。これで川があれば完璧な遊び場だったが、残念なことに川はなかった。
祖父は昔かたぎの厳しい人だったが、孫という存在は別格だったのだろう。僕に対してはむやみに優しくはなかったけれども、厳しくもなかった。
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