第3章

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 日曜日の夕方。新幹線に乗って戦場に向かう兵士を東京駅で見送っていると、一人で帰る寂しさは回を重ねるごとに深まっていく。馴れないこの痛みに苦戦しながら、私はまた彼のいない平日を一人で生き抜かなければいけない。  出来るなら傍にいて欲しい。毎朝、目覚めたらそこに寝顔が合って欲しい。彼の着替えを洗濯したり、一緒に買い物に行って料理をして同じものを食べたい。同じものを見て、同じ音楽を聴いて、同じ空を見上げたい。ずっと……。それだけ悠人の存在が特別なものになっていった。  雨の日は、目を閉じればどこであろうと彼と絡み合う甘さが全身に広がり、離れていることにやるせない虚しさを覚えた。耐えがたい痛みが尾を引くのに、彼を思い出すことをやめられなくて、指先で耳を塞ぎながら彼の名をつぶやいた。ベッドの海にいるようで、そこに彼がいるようで、一瞬でも安らぐために、私は目を閉じて雨に濡れた。  夏が終わり秋が来て、朝晩が肌寒くなってきたある土曜日の朝。彼から電話が来た。 「ごめん。今週は行けなくなった」 「え? 仕事?」 「……うん、そう」  歯切れの悪い様子から、彼が嘘を吐いている気がするのは考え過ぎだろうか?  悠人と付き合い始めてから、全ての週末を彼との時間に充て続けてきた私は、広大な砂漠に放り出されたような気分になった。久しぶりの一人の時間だからと、気になっていた映画を観に出掛けたけれど、隣に居るはずの悠人がいないせいで何もかも味気ない程に素通りしていく。禁断症状なのか、体中がムズムズして落ち着かない。肌が乾いて、心も乾ききって、次の週末まで彼を待つことに恐怖を覚えた。居ても立ってもいられなくなって、気付けば私は着の身着のまま新幹線に飛び乗って彼の部屋に向かっていた。
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