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取り返しがつかないことは往々にしてあるもの。このすっきりしない感情を抱えて、そのすっきりしない男とそっくりな息子を、私は一人で育てていくと決めたのだ。彼とこの子を、愛すると、決めたのだ。
お葬式の時。悠人もまた私と同じ親なし子だったと、初めて知った。血の繋がりのある親の愛情を知らない私達が結ばれて、こうして子供が生まれた。この子の身体の中に宿る赤い糸が今も悠人と私を結び付けてくれているから、私はこの運命を、受け入れる。私が二人分の愛情を持って親になることが出来たら、悲しいカルマは私で終わらせられる。何があってもこの子を守り抜こう、と悠人に誓った。
悠人は嘘つきじゃなかった。私が彼を無条件に信じられたら、彼は死なずにいられたかもしれない。見返りを期待しない愛だったなら、彼は今頃、私と二人でこの子を抱いて、笑顔ですぐそこに、いたかもしれない…。私さえ、全てを許し、彼の不完全さを受け入れられていたら…。
空がどんなに晴れていようと、彼を想う時は激しい雨が降りしきる。やまない雨に濡れて、これから死ぬまで私は悠人を想い続け、彼への愛を探り続ける。
息子が泣いて、私を呼んだ。
了
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