ユキ

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でも、母はそう言って私を責めているように思えた。ユキは一人っ子だった。母の溜息の中に、「孫の顔も見れないで私は死んでゆくのかしら。。」っていう遣る瀬無い思いが込められているような気がした。 キャリアウーマン、、、、、 女性が管理職に就くことは今や珍しいことでもなんでもない。キャリアウーマンなんて言葉も死語に等しい。それでも、キャリアウーマン=行き遅れ、という数式がどうしてもユキの頭の中で成立してしまう。 「ふん、何よ!結婚するだけが人生じゃないわよ!」 ユキは心の中でそう嘯いた。 ユキは花火大会帰りでごった返してきた車内でスマホの画面に視線を戻し、何気にFacebookのウォールを眺めていた。 誰がシェアした投稿か分からない。 【情けは人のためならず。っていう言葉の意味知ってますか?】 っていうタイトルがふとユキの目に止まった。 と同時に、子供の泣き声が聞こえてきた。 気がつくと、ユキが座っている目の前で、小さな男の子を抱いた母親が立っていた。ちょうどユキと同じくらいの年代に見えるその母親は、器用にも男の子を胸に抱きながら、片方の手で傍に置かれたベビーカーを持ち手をしっかり握っていた。     
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