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リサ
「ただいま」
「まあまあ、おかえり。あら、2人とも寝ちゃったのねえ。」
リサは抱っこしていた裕太を出迎えてくれた母親に渡して、スニーカーを脱いだ。脳裏には夜空を色とりどりに彩った花火が焼き付いている。しかし、それ以上に疲れは隠せない。
梨花はベビーカーの中ですうすうと寝息を立てている。
裕太と梨花を布団に寝かせたあと、リサはリビングのソファに腰を下ろした。
「花火、どうだった?」
「うん、綺麗だったよ。」
「そう、、良かったわね。」
夫の裕司をがんで亡くしてからもうすぐ丸一年になる。裕司が身体の変調を訴え、病院の診察を受けた時にはもう手の施しようのないほど、がん細胞はまだ若い裕司の身体を蝕んでいた。
リサは裕司の死後、一緒に住んでいた賃貸のアパートを引き上げ、実家に戻った。
女手ひとつで子供を育てるために、近くの歯医者の受付業務の仕事を始めた。
夫の裕司を亡くす2年前に父親もがんでこの世を去った。ひとりぼっちになってしまった母親にとっては、旦那の死という決して喜べない事情であっても、リサと孫2人と一緒に暮らせるようになったことは嬉しいことであった。
リサが家にいない時は、母親が子供達の面倒を見てくれる。リサにとってもそれは有難いことであった。
はあ、、、疲れたわ。。
母親が淹れてくれたアールグレイを飲みながら、リサは溜息をついた。そして、スマホを手に取り、Facebookのウォールを覗いた。
久しぶりの花火大会!
めっちゃ綺麗だった!
たった二行のコメントの下に
色とりどりの輝きが夜空を彩る花火の画像が4枚添付されている。
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