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「和葉、何をしてるんだ?」
「お兄ちゃんこそ、こんな時間に何をしてるの?」
深夜の公園で見つけた月明りに浮かぶ影。興味本位で覗いてみると、腹違いの妹の和葉だった。
「明日は休みだからな。コンビニでビールとツマミを買ってきたんだ。それで、和葉は?」
「ちょっとね」
明らかに様子がおかしい。そもそも、深夜の公園に一人でいること事態が異常だけど。
「真っ暗な公園に一人でいたら、変態に襲われるぞ。さあ、家へ帰ろう」
「うん……ねえ、お兄ちゃん。仕事って楽しい? 何で仕事をしないといけないのかな?」
「和葉?」
月を見上げる和葉の瞳が金色に染まる。質問に答えなければ、ここを動いてくれないようだ。俺はため息を一つ吐いて近くのベンチに座った。
「何で仕事をするか……答えは簡単、生きる為だよ。働かなければお金を貰えないし、ご飯も食べられない。宝くじでも当たれば別だけどな」
「そうだよね」
和葉の質問や受け答えは要領を得ないが、仕事で悩んでいる事だけは伝わる。
和葉が大学を卒業したのは二年前。俺と違って優秀な妹だから、一流企業に就職して順風満帆なはずだ。
「何かあったんだな。まあ、思い通りにいかないのが人生だ。俺なんか上手くいく方が珍しくて、坂道を転がりまくってるよ。だけど、こんな俺でも愚痴くらいは聞ける。話してみろ、スッキリするかも知れないからさ」
ビール片手に軽く合図すると、横に座った和葉が重い口を開く。
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