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♯ご
大学進学は、高校以上の悩みどころであった。恋人やあの異常な母親を思えば、就職以外に選択肢はないのだろう。
しかし、それでも大学に進学しなければならない理由があった。それは誰であろう、またもやあの忌々しき幼なじみ(クズ)である。
どんな運命のイタズラか、恋人とあのクズの志望大学は偶然にも同じものであったのだ。看護師を目指す恋人とは流石に学部は違うが、校舎は四年間同じてある。あのクズのことだ、恋人が同じ大学と知れば間違いなく接触してくるであろうことは目に見えている。
俺の目の見えないところで、そんなことをさせることなど出来なかった。恋人やクズには何度も志望大学を変えさせようとしたが、当然理由を言えるわけもなく、説得は失敗に終わった。
ならば二人の密会を阻止するために、俺に出来る手段は一つ、俺自身も大学へ入学するしかなかった。
だが、まともに服すら買えない俺が四年間の学費など払えるわけがなく、それどころか入学金すら用意出来ない。普通に考えて俺の入学は不可能であった。
ゆえに、俺の選択肢は一つしかなかった。奨学生、つまりは学費免除の資格を取ることだけだった。しかしながら、それはトップクラスの成績で入試を突破しなければならないことを意味していた。
それは前世の恩恵のある俺でも不可能に近い難易度だった。だが、それ以外に道がないのだから仕方なかった。
決意した次の日から、受験終わりまで恋人と会うのを止めた。あちらも受験があり、気をつかってくれたと勘違いしたのか、特に反対もなかった。
そして、俺はアルバイトの時間以外の全てを勉強に費やした。たまに来るクズからの連絡は無視し、睡眠時間も可能な限り削り、時おり喚き散らす母親をストレス解消も兼ねて殴って黙らせ、ひたすらに問題と向き合った。
そうして受験が終わる頃には体重が十キロ以上減っていたが、その甲斐あってか俺は恋人と同じ大学へ奨学生として無事入学出来た。
久々に会った恋人からは何故か進学を黙っていたことを詰られたが、説明する必要性と努力した者に対する非常識な態度を長時間かけて指摘すると最後には謝罪した。
この時、母親にするクセで初めて手を出してしまったが、それでも分かり合うためには必要な措置だったのだから仕方ない。
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