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♯  大学を中退してからかなりの時間が経った。周りには時計もカレンダーもないからどれだけ時間が経ったのか分からないが、とにかく長かったように感じる。  あれから色々なことがあった。まず、元いた家を追い出された。それもこれも、あのイカれババアのせいだ。  しばらく動かないからやっと死んだかと安心して縛らずにいたら、目を離した隙に家中の物を壊して、隣の家の玄関でクソしやがった。おかげで大騒ぎになったあげく、大家から追い出された。  流石にこうなったからには役所も住むアパートくらいは見繕ってくれたが、周りは似たような連中ばかりの溜まり場で、はじめは毎夜響く奇声にうんざりしたが、慣れるとにぎやかで愉快に感じてくるから不思議だ。  あと、バイトもクビになった。まあ、勤務中に何度も警察が来て母親を保護しただの、どこかで問題を起こしただのと訪ねてくるのだから仕方ない。むしろよくもった方だと自分を誉めてやりたい。  それからはやることもなく退屈だから、たまに役所に行っては手当や保護の申請に行くが、努力が足りないと無駄に丁寧に審査された後に毎回断られる。いい加減、顔見ただけで追い返せばいいのにマメな連中だ。  それ以外の時は、同じアパートの奴らと一緒にゴミを漁ったり、たまに転がってくる非合法なクスリを分けてもらって楽しんだりと意外と仲良くしている。聞けばどいつもこいつも似たような境遇の奴ばかりで、同調して話が盛り上がることも多かった。
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