回帰

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 だが、そんな生活も今日限りで終わる。元凶であるイカれババアが死んだからだ。いや、正確には俺が絞め殺したからだが。  事故死に見せるだけならいくらでも出来たが、それでは刑務所に入れないからあえて分かりやすいやり方にした。暇な時間をつかって色々調べてみたが、収監される方が今の暮らしよりは大分マシな事が分かったからだ。   あとは介護疲れを理由に涙混じりに自首すれば、ほどほどの罪になるだろう。ついでにあの気に食わない役所の連中もマスコミで叩かれるだろうから、一石二鳥だ。  そんな風に考えているとふと、郵便受けの中にある一通の封筒が目に入る。  その封筒は大学への返還金の督促、それからクソみたいな広告や公報に混じるには不似合いな上質な素材で出来ていた。だからだろうか、普段なら無視するであろうそれを何となく手に取った。  ーー私の、最高の友人へ  その表には、見覚えのある字でそう書かれていた。中を見るまでもない、それだけで誰からの物か分かる封筒を舌打ちして破ろうとしたが、せっかくだから、どんなふざけた内容かだけでも見てやることにした。  中を見ると、それは結婚式の招待状であった。新郎は勿論あのクズであり、新婦の欄には俺を騙していたもう一人の幼なじみの名前があった。     日付を見ると、何の奇跡か式は今日の日付だった。場所もそう遠くはなく、金銭的にも時間的にもギリギリ辿り着けそうである。  そんな運命的な偶然に、不思議と惹かれるものがあった。どうせ、今日が最後なのだ。なら、俺の今の姿をーーアルバイトをクビになってから、ろくに髪も髭も切らず、風呂にも入っていない浮浪者同然の姿で乱入し、幸せな結婚式をぶち壊してやるのもありか。  そう決めると、俺は残り僅かになった金銭を全てかき集め、死臭のする部屋を後にした。
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