回帰

16/18
前へ
/21ページ
次へ
 そうした経緯を経て式場についたものの、俺は中に入ることは出来なかった。ドレスコードを満たしておらず、招待状を拾った浮浪者と間違えられたからだ。  考えてみれば当然ではあるが、仮にも招待客に無礼を働く受付と揉めていると、警備員を呼ばれてしまったので慌てて退散した。  とはいえ、このまま引き下がる気もないので、裏手回ってこっそりと敷地内侵入する。こちらは警備も手薄だったので、出入りする配送業者の車に紛れて上手く入り込めた。  そこから見つからないように回り込むと、チャペルの中が見える窓があったので覗き込みーーそして、衝撃を受けた。  そこには、幸せが溢れていた。俺と付き合っていた頃とは別人のように美しく、幸せそうなかつての恋人。その隣には学生時代より凛々しくなり、負けないくらい幸せの笑みを浮かべる幼なじみの姿。そして、それらを心から祝福する人々の声でチャペルは溢れていた。  その光景を見て、脳裏に幸せの絶頂にあった前世の最期が浮かぶ。それと共に、沸騰するような怒りが浮かぶ。     
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加