終末

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 そして、忘れてはならない幼なじみがもう一人いる。  こちらは男性であり、早くに父親を亡くしたせいか、あまり裕福な生まれではなかった。  そんな不幸な生い立ちだからか、口癖は「人は生まれで全て決まる」と後ろ向きなものであり、努力すれば出来ないことはない。が持論の私とは合わない部分もあった。  だが、それでも彼は私が最も尊敬する人物である。何故なら彼は私の知る限り、最高の努力家であるからだ。  小学校で出会った時からリーダーシップに優れ、文武両道を地でいく人物であった。  中学生の時に私と同時にサッカー部に入り、キャプテンとしてチームをよく引っ張っていた。  不幸にも、高校時代に母親が倒れたため、サッカーを続けられなくなってしまったが、そんな中でも必死で勉学に励み、奨学生として大学に通っていた。まさに現代の蛍雪の功である。  残念ながら大学に入って少ししてからは疎遠になってしまったーー入れ替わるようにして、妻と恋仲になったのもこの時期だったーーが、風の噂では今でも倒れた母の介護をしているらしい。流石は私の目標とする人物である。  当然、今日の式の招待状も送ったのだが、最後まで返事をもらうことが出来なかった。寂しいが、家のこともあるし、彼にも事情があるのだろうと自分を納得させた。  しかし、そのことを話すと、何故か妻の方は安心したような素振り見せたのが少し気になった。彼とは妻も昔からとても仲が良かったはずなのだが。
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