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♯3
中学校に進学してからも、私の生活は順調だった。
学業はまだまだ前世の知識で対応出来たし、迷った末に入ったサッカー部でも、入部早々期待の新人として歓迎され、その期待に応える形で結果を残し、最終的には満場一致でキャプテンに任命された。
私が成長するにつれて増える養育費は家計を悩ませたが、母は気にするなと言ってくれた。高校生になればアルバイトでもして家計の助けになれるのだが、義務教育すら終えていない身ではどうしようもなく、せめてもと昼食代や遊ぶ費用を節約するしか出来なかった。
しかし、それを差し引いても私の学生生活は素晴らしいものであった。なにせ、成績学年トップでサッカー部のエースである。漫画でも今時見ないような、誰もが羨む立場なのだ。当然のように女子からも告白される機会が増えた。
だが、私がそれに応えることは無かった。何故ならば私は秘密裏に部のマネージャーある娘とーー幼なじみである例の少女と、付き合っていたのだから。
自分で言うのも恥ずかしいが、人気のある私と付き合うと知られて彼女に迷惑をかけるわけにもいかないため、常に名前は伏せいていたが、それでも私に相手がいるという噂が広まると告白の方も落ち着いてくれた。
また、もう一人の幼なじみであるあの少年も相変わらず一番の親友であった。同じサッカー部に所属し、二年生からながらもレギュラーとして活躍してくれた。
また、試合外でもキャプテンとしての重責や悩みを打ち明け、相談にのってもらうことも多々あった。間違いなく彼がいなければ、こんな風に素晴らしい青春を謳歌することは出来なかっただろう。
あえていうなら、彼の口から度々漏れるサッカー以外のピアノや海外旅行、スノーボードといった裕福だからこそ出来る多趣味な話には、微かな嫉妬を覚えはしたが、彼に悪意がないことはよく分かっているので、それを諌めることはしなかった。
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