胸の奥の枯れない花

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いつものように、3人で新しい家々が並ぶその隙間を駆け回って遊んでいると、見知らぬ女の子が僕たちと一緒に走っていた。 僕と町田は、ゴミ置き場の石壁に隠れながら、 「あれ誰なん?」 「坂口の従姉妹のお姉ちゃんやって」 「足、めっちゃ速なかったか」 「知らんわ」 僕の目はその見たことがない坂口の従姉妹をずっと見ていた。髪型はおかっぱ。今で言うショートボブ。目が中程に寄り気味なのは、坂口そっくりだ。 僕が嫌いだった坂口をまるで付き人のように従えて、僕と町田は見つかった。 「みぃつけた!あはは。今度はあんたら鬼やで。行くで。逃げるで。トシ」 今度は僕たちが、追いかける番だ。 白のキャンバスに自分が思い描いた色彩が施されていくように、胸が高まり、家の屋根の空は頭抜けて青かった。 「野球するで」 「よっしゃー」 当時、僕たちの中で野球と言えば、サッカー野球だった。キックベースのようにサッカーボールを足で蹴り、塁を回る。野球をするグラウンドが近くになく、ボールひとつあれば出来る手軽さからこちらが主流だった。 アザレア公園はとても狭い所だったので、町田の蹴ったボールは常に柵越えだった。 「畑、2枚目の手前かあ。もうちょっとで新記録や」
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