胸の奥の枯れない花

4/7
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「行くで!新記録出したるわ」 姉ちゃんの元気は凄まじい。 「ヤバイぞ。坂口、全力で止めにいけよ」 僕はそう叫ぶと、おう、とばかりに彼は手を上げた。 嫌いなはずの坂口の背中がとても頼もしく感じ、彼に対する壁が嘘のように、あっけなく消えた。 姉ちゃんは坂口の投げた球を思いっきり蹴り飛ばした。 しかし、力はやはり女性だ。柵の少し手前で落ちた。 「やったあ!姉ちゃん、レフトフライでアウト。試合終了や」 僕と町田が口々に叫ぶと、よほど悔しかったのだろうか。 姉ちゃんは落ちたボールに走り寄ると、なんでや、とばかりボールを持って柵の外に投げ込んだ。 ボールは畑のはるか向こうまで飛んだ。 「おい、反則やぞ。反則や反則!」 「新記録やろ。2枚目まで飛んだで。サヨナラ場外ホームランや」 姉ちゃんは、さすがに分が悪いと思ったのだろうか。照れ笑いして、たしなめるようにみんなとサヨナラホームランの喜びを共有しようとしていた。 日が暮れかけて、もう帰らなければならない時間になる。 このまま、夕日が落ちなければいいのに。 そんななか、町田の家でパズルゲームをすることになった。姉ちゃんはとにかく速かった。僕たちが戸惑う間に2枚3枚と合わせていく。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!