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「行くで!新記録出したるわ」
姉ちゃんの元気は凄まじい。
「ヤバイぞ。坂口、全力で止めにいけよ」
僕はそう叫ぶと、おう、とばかりに彼は手を上げた。
嫌いなはずの坂口の背中がとても頼もしく感じ、彼に対する壁が嘘のように、あっけなく消えた。
姉ちゃんは坂口の投げた球を思いっきり蹴り飛ばした。
しかし、力はやはり女性だ。柵の少し手前で落ちた。
「やったあ!姉ちゃん、レフトフライでアウト。試合終了や」
僕と町田が口々に叫ぶと、よほど悔しかったのだろうか。
姉ちゃんは落ちたボールに走り寄ると、なんでや、とばかりボールを持って柵の外に投げ込んだ。
ボールは畑のはるか向こうまで飛んだ。
「おい、反則やぞ。反則や反則!」
「新記録やろ。2枚目まで飛んだで。サヨナラ場外ホームランや」
姉ちゃんは、さすがに分が悪いと思ったのだろうか。照れ笑いして、たしなめるようにみんなとサヨナラホームランの喜びを共有しようとしていた。
日が暮れかけて、もう帰らなければならない時間になる。
このまま、夕日が落ちなければいいのに。
そんななか、町田の家でパズルゲームをすることになった。姉ちゃんはとにかく速かった。僕たちが戸惑う間に2枚3枚と合わせていく。
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