胸の奥の枯れない花

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しかも、僕たちに質問して茶化したり、ムードのある即興の歌を歌ってみたり、今まで日没後にこれほど楽しいと思ったことは、初めてだった。 そして、パズルは完成した。 町田の家を離れてすぐ近く、坂口と共に夜道を去ってゆく姉ちゃんをとても寂しい気持ちで見送った。 「ばいばい。また、遊ぼうな。てっちゃん」 遠くで僕の名前を呼んだ。 家までの道のりは田畑のあぜ道をひたすら歩くのみ。 とは言え、2、3分歩けば、家に着く。なのに、辺り一面真っ暗で足元が見えない。月が照っているだけ。 道の側には、小型のバイクの残骸が佇んでいる。月光を浴び命を宿して、いきなり立ち上がり動き出したりしないかな。いつも怖かった荒れ果てた機械が、今日は異様に見えた。その横を通り過ぎようとした。 女性がむせび泣いている。 えっ。姉ちゃん、姉ちゃん! 感覚的にそう感じた。少し後ずさりした。さっき別れたばかりだからだ。 次の瞬間、体勢を変えてこちらに向き直り、僕を見ずに夜空を見ていた。僕もつられて見上げると、まわる天体の星の数は数えるほどしか無かった。 彼女はすうっと光るバイクの横手で消えてしまった。 月の光は、僕の背中を冷たく照らし続けた。 僕は姉ちゃんを初めて、好きなんだと実感した。
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