胸の奥の枯れない花

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この暗い道の向こうの、自宅の窓から煌々と洩れる明かりを頼りに僕は歩いた。 それから僕は、坂口の従姉妹ともう一度遊ぶ機会があった。しかし、僕には2回目の記憶がほとんどない。理由は分からないが、僕はそれがとても悔しい。子供のころは興味があちらこちらへ飛び回り、定まらず、そんななか大事な記憶を逸してしまったのだろうか。 断片的だがはっきりと覚えていることが、1箇所ある。 それは、坂口の家の横の高いコンクリート塀に登り、 「あんたらも、登って来いや」 と促している場面である。冒頭での風景だ。 あれから、長い年月が経った今でも、僕は彼女と同じようなボブヘアーを街中で見かけると、ふと見てしまう。僕の本能に近い部分を支配した彼女はまさしく、初恋の人だった。 社会人になって、かつて少年時代を過ごした街に想いが募り、バイクを飛ばして1時間、国道を走り続けた。 大阪と言っても、片田舎な風情は今も昔も変わらない。ただ、僕が知っている街ではなかった。確実に進化している。当たり前のように。 僕の昔住んでいた家は高速道路拡張の為、取り壊されて無かった。町田の家はあったが、誰も住んでいる様子はない。引っ越したのだろう。アザレア公園は、こんなに狭かったのかと思うほど狭く、雑草が至る所に生えて、見るも無残な廃園になっていた。
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