第1部:カラスと冒険の始まり

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 「ハゲー、ピカピカー」と悪口を言い残しながら俺は神殿の扉を開け放って出て行った。  何故か案内してくれたおっさんが傷付いていた。 悪いことをしてしまったかもしれない。  舗装されている道にポツリとあった小石を蹴飛ばす。 いや、小石ではなく硬い皮に包まれた木の実のようだ。  なんでこんなところに、と考えながら拾い上げると、近くの家の上から「カア」と鳴き声が聞こえた。  そこにいたのは真白いカラス。 一瞬、人間に害なす存在である魔物かと思ったが、どうやら違うらしく、ただの珍しい白カラスのようである。  手元にある木の実とカラスを見比べて納得がいった。  馬車に轢かせることで木の実を割ろうとしていたのだろう。  賢く気の長いカラスだな、と考えながら手で殻を潰して中身を取り出す。 「ほいっスよー」  カラスに向かって木の実を投げ飛ばす。飛んで掴んでいくものかと思ったけれど、何故か飛ぶこともせずに跳ねて動いた。  不思議に思ってカラスの姿を見る。 片方の羽がない、白い羽もボロボロに荒れているようだ。 「……大丈夫ッス?」  カラスが答えるわけもないが、尋ねる。 当然返事などはなく、カラスがパクりと木の実を咥えた。     
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