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カチリとカラスは木の実を半分に突き割って、またトントンと跳ねて俺の元にきて、靴を突く。
「くれるんすか?」
手を出すと半分の木の実が渡される。 随分と賢いカラスである。
食うのは衛生的にあれだな。 などと思うが、せっかくもらった物を捨てるのはしのびなく、何よりカラスがジッとこちらを見ている。
カラスが残り半分を嘴を使って食べた。 仕方ないか、この程度なら腹を下すこともないだろうと、木の実を口に含む。
食えなくはないが、食感は固く、味はほんの少し甘いが苦い。 オマケに後味も舌に苦味が残るようで最悪である。
「ありがとッス。 美味かったッスよ」
そう言うと満足したのか、カラスはまた跳ねて何処かに移動する。
ふぅ、とため息を吐き出して、これからのことを考える。 結局、光の神からは異能力を与えられることはなかった。
別にそれほど拘りがあるわけではないが、親には散々色々と言ったので、このまま帰るのはどうにも格好が付かない。
将来……というか、暫く旅の用意をしてから、旅に出る予定なので、慣れるためにも今の内に異能力をもらっておきたい。 異能力なしで旅に出るなど、魔物に食われたいと言っているようなものである。
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