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「聖女様ああああ!! 俺の聖女様がああ!!」
勢いよく燃えていく新聞を掴み、火を払おうとするが燃える勢いは増すばかりだ。 涙を垂らすが、それが消火の役に立つわけがなく、聖女様の笑みは炎の中に消えていく。
「ごめんねレイヴ。 これも貴方のためなの……」
薄く唇をあげて、俺と同じ黒い眼を細めて笑う。
母親は燃えて炭となった新聞に脚を踏み下ろしてぐりぐりと踏みにじった。 見るところが見れば大問題である。
明確に怒っている。 というか、キレている。
「……お母さんはね。 貴方のことを応援してあげたいと思ってるの。
旅人になってもいい。 冒険家になるのも否定しない。
けどね、成人して神様と契約しにいったはずの息子が、聖女の写真が載った新聞を嬉しそうに抱えて帰ってくる。 しかも契約もせずに」
俺の涙を気にする様子もなく、母親は舌打ちをする。 元お嬢様とは思えないような態度の悪さだ。
「いや、それは神に断られたからであって俺が好きでしたわけでも……」
「まず契約を断られるのがダメなの、よほどの悪人でも契約出来るというのに」
そう言われても。
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