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その後
記憶が戻ってから数日経った今日。
俺は皆より何日か遅れた夏休みを終えた。
独りで歩く通学路は、長く寂しいものに感じさせた。
そんな通学路もあっという間で数十分後には、教室の前に立っていた。
扉が開いた教室から見えるのは楽しそうに騒ぐ同級生。
俺は足がすくんだ。
カイがいなくなってから俺の日常から色が消えたようだった。
つまらないモノクロ世界。
前のように楽しめると思えなかった。
足がゆっくりと後ろへ下がる。
下がったはずだった。
なのに、俺の体は前に出ていた。
俺の意思ではない。
背中が押されたんだ。
振り向くがそこには誰もいない。
普通の人なら怖がるだろうが、俺はニヤリとした。
そして、誰にも聞こえない大きさで
「ありがとうな。」
と呟いた。
俺の耳元で、『いえいえ!』と元気に返す声が聞こえた気がした。
俺は深呼吸をして大きく1歩を踏み出した。
「おはよう!」
教室ではクラスメイトの元気に「おはよう!」と言う挨拶が響いた。
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