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★リッツ
約束の時間、来てくれるか分からないまま待っていた。
一瞥で終わってしまうような手紙にしたくなかった。だからこそ挑発的に、脅すように書いた。でも後であんな手紙、気を悪くするに違いないと思って落ち込んだ。あの時はとにかく来てほしくて必死だったんだ。
どうしたっていうんだ。昔なら相手が来ようが来まいが気にもしなかった。「縁がなかった」で終わらせられた。
今はこんなにも、落ち着かない。
「リッツ様、お客様です」
ルフランの言葉に、リッツは勢いよく席を立つ。ブティックの奥にある会食用の小さなダイニングに、彼は飾らない格好で来てくれた。
「来たぜ」
「あ……有り難う」
「ったく、あんな手紙あるか? 流石にやめろよ」
「……ごめん」
なんだ、嬉しい。泣きたくなるくらい嬉しい。そして反省した。溜息をついて腰に手を当てるグリフィスに嫌われたんじゃないか。そう思ったら不安になってもくる。
「おい、リッツ!」
「え?」
「お前、何泣いてんだ」
指摘されて、自分の頬を撫でた。濡れていて、驚いたのはリッツの方だ。思わず乾いた笑いが起こった。
「ははっ、何これ。俺、何してんだ?」
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