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「あの夜の事を思いだして、他の相手と比べて、その……満たされないんだ。グリフィスさんなら、とか。ここでこうして欲しいのに、とか。不満が出て、それで」
「あのなぁ。お前、本当に誰にでも掘らせてるのか?」
「!」
ドキリと心臓が音を立てる。一瞬否定する言葉が浮かんだ。けれど、それは言い訳と嘘だ。
項垂れる。どうしたんだ、いつもみたいに開き直ればいいものを。
グリフィスの溜息が聞こえる。呆れられただろう……やっぱり嫌だろうな。
そんな諦めが頭を過ぎる。だが、与えられたのはまるで犬でも撫でるような手の温もりだった。
「まぁ、人の事をとやかく言うつもりはない。けどよ、俺にあんな手紙送るなら少し整理しておけよ。俺は自分の獲物を横取りされるのは嫌いだからな」
「あ……」
嫌ってない? 本当に?
「整理したら、また遊んでくれる?」
「遊びか?」
「だって俺、一ヶ月とかいないんだし。その間、疼くし。欲求抑えられるとは思えないし」
「素直すぎだろ」
「でも、でも! 王都ではグリフィスさんだけにする!」
行く先々では遊ぶと言っているのと同義だが、それでも必死だ。リッツにしたらかなりの譲歩なのだ。
溜息をつくグリフィスがガシガシと黒髪をかく。困った時の癖なんだろう。
「駄目?」
「捨てられた犬みたいな目ぇ、するんじゃねぇよ」
「捨てられる?」
「……捨てねぇが、躾けだな」
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