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家族
カールの婚礼から数日後の安息日、オリヴァーはアレックスの屋敷で待ち望んだ時間を迎えていた。
「わぁ……」
重厚なケースに入れられた二つの指輪を目の前にして、思わず溜息が出る。アレックスと二人で並んで、思わず手を握った。
「思った以上にいい仕上がりだ。案外早く出来てよかった」
「えぇ、本当に」
精緻な彫り込みが施された二つの指輪を眺めて、オリヴァーは幸せに笑みを深めた。
約束通り、西から戻ってきてすぐにアレックスと指輪を見に行った。出発前にもらったものは婚約指輪だと言った彼に、揃いの結婚指輪を所望したのだ。
あれこれと見て決めたのは、とても綺麗なデザインのもの。
形としてはシンプルで、石がついているわけではない。だが、その分彫り込みが美しい。内側と僅かな縁が金、外側の彫り込みはプラチナ。
彫ってもらったのは植物の蔦を模したデザインに、半分の薔薇。二つを合わせると絵が完成するようになっている。
もう少し早く完成するはずが、カール成婚に煽られた人々も次々結婚だ、プロポーズだと空前の結婚ラッシュとなり、注文から一ヶ月半、ようやくの完成だった。
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