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暑い夏。
もうすぐ午後七時だっていうのに、地面からの熱がわたしの肌に纒わり付くようだった。
二階のベランダから、わたしは毎年同じように階下の人波を眺める。この日、家の前は大混雑。
ソースの匂い、肉の焼ける匂い。時々見かけるかき氷の色は様々で、それを持つ浴衣の色も鮮やかで視覚を刺激する。
もう少しすればこの空にも花が咲いて、より賑やかになるに違いない。
地元のお祭りはわたし達にとって大イベント。夏休み中だから、わたしと同じ高校生の姿もよく目にする。
「混みすぎて嫌になる」
お祭りの雰囲気は好きだけれど、人混みは嫌い。だからわたしはお祭りの日はベランダにいる。
家族が勝手に焼きそばとかお好み焼き買ってきてくれるし、わたしは楽して祭りを楽しむ。
あ。イカ焼き頼むの忘れちゃった。電話する? いや、この混雑だもん。気づいてくれないか。
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