2/11
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「あすか!!」  どうしようかと思っていたら、階下からわたしを呼ぶ声。今年もあいつが来た。 「ハル、今年は遅かったね!」  大声で答えてやると彼は笑う。  金に近い茶髪で、紺色の浴衣を着こなして、どこか不釣り合いなのに似合う。これがイケメンってやつなのかな。  多分、隣町の高校。こんなイケメン、わたしが通う高校にはいない。そういえば、ハルのことよく知らない。  ずっとこういう関係だもん。ベランダにいるわたしに話しかける変なやつ。 「ハルさ、花火見に行くの?」 「そのつもり!」 「もう十分くらいで始まるよ! 急いで行きなよ!!」 「今年はさ……」  そう言い始めたハルの右手にはイカ焼き。わたしが食べたかったやつだ。羨ましい。近くにお店、あるのかな。 「今年はあすかと見たい」  イカ焼きに見とれていて、わたしはハルの言葉を理解するのに時間がかかってしまった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!