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「あすか!!」
どうしようかと思っていたら、階下からわたしを呼ぶ声。今年もあいつが来た。
「ハル、今年は遅かったね!」
大声で答えてやると彼は笑う。
金に近い茶髪で、紺色の浴衣を着こなして、どこか不釣り合いなのに似合う。これがイケメンってやつなのかな。
多分、隣町の高校。こんなイケメン、わたしが通う高校にはいない。そういえば、ハルのことよく知らない。
ずっとこういう関係だもん。ベランダにいるわたしに話しかける変なやつ。
「ハルさ、花火見に行くの?」
「そのつもり!」
「もう十分くらいで始まるよ! 急いで行きなよ!!」
「今年はさ……」
そう言い始めたハルの右手にはイカ焼き。わたしが食べたかったやつだ。羨ましい。近くにお店、あるのかな。
「今年はあすかと見たい」
イカ焼きに見とれていて、わたしはハルの言葉を理解するのに時間がかかってしまった。
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