第5章『審判の日』

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第5章『審判の日』

 研究所内に、アラートが発動された同時刻───『銀河線観測研究所』前の海に水柱を上げて水クモ型の巨大機神が出現した。  硫黄混じりの雨を降らしながら、長い脚を軋ませ。研究所の方向に進行を開始した水クモ型機神。  大空を覇者機【エアリアル】に乗った、弁財天アテナ准佐が指揮する、アポクリファ機構の戦闘機隊【 紅蓮の覇者・ワルキューレ隊 】がクモ型機神に攻撃を開始する。 「研究所に近づけるな! 我らワルキューレ隊の空魂を見せてやる!」  海からは艦長のクーフー・ランスロット准佐が、ズムウォルト型追撃潜水艦【シーサペイント】で艦隊指揮を務める、潜水艦と戦艦の混合部隊【紺碧の追撃・ミッドガルト隊】の攻撃も開始された。 「機神に臆するな……海魂は我らにあり」  陸では円騎堂 タケル准佐が搭乗する重機動陸母車両【ベヘモス】から次々と発進される、電磁レールガン砲戦車の機動車両部隊 【深緑の機動・フォンリル隊】の一斉に砲撃がクモ型機神に向けられていた。 「陸魂を見せてやれ、クモを上陸させるな!!」  空海陸の攻撃を受けても、水クモ型機神の進行速度は衰えない。  海上に露出した胴体部分への攻撃は、六角形をしたクモの巣型の光学シールドで防御され。  海中の脚はピラニア型の魚群機神が、機神魚の壁を作って防御している。  シーサーペイントの潜水艦内でランスロットが呟く。 「海中も鉄壁の守りか……厄介だな」  空では爆撃を続けるアテナが、歯がゆさに唇を噛み締める。 「あの変なシールドに妨害されて、本体に攻撃が届いていない……なんてヤツなの」  陸上のタケルは、クモ型機神が岸に近づくにつれて、少しずつ フォンリル隊を後退させる。  水クモの機神は口から炎を吐き、後部から出した強靭なクモの糸を操って、戦闘機や軍艦や戦車を次々と粉砕しながら研究所に近づいていた。  研究所内では那美とミコトを誘導するイヴが、インカムで所員に指示を出しながら研究所の通路移動をしていた。 「見学生徒の地下シェルター誘導は終わった? そう、あたしたちもそちらに向かう」  通路の窓からは、海から近づいてくるクモ型機神が見える。  那美が、イヴに質問する。 「ナニあれ? いったい、あなた何者?」 「あれは『機神天國』の機神……何者って質問は役職? それとも名前?」 「名前を名乗るのが先でしょう、あたしは『天津川那美』こっちにいるのは、幼馴染みの『裾野命』」 「あたしは、イヴ・アイン・狩摩……ネフィリムに作られた人類へのメッセンジャー」 「作られたって? あなた、いったい?」  その時、那美の視界の片隅にクモ糸で切断された戦闘機の片翼が、回転しながらこちらに飛んでくるのが映った。  咄嗟の判断でミコトを突き飛ばす那美。  片翼は建物に衝突して、壁と天井が崩れる。  間一髪で直撃から逃れたイヴは、翼激突の衝撃で落下してきた天井の下敷きになっている那美の姿を見た。  突き飛ばされて助かったミコトが、頭から血を流して意識を失っている那美に駆け寄り叫ぶ。 「那美!! 那美!!!」  粉塵の中、飛び散った壁片で脚が少しだけ傷ついたイヴがインカムで職員に連絡する。 「大至急、救護班をこちらに……研究所内に負傷者多数で手が回らない? 指令系統を地下の『アポクリファ機構』本部へ移行───地上の研究所は破棄する、救護班をできる限り早く。人類の未来がかかっている」  ミコトは必死に那美の上に乗っていた天井板をどける。頭部を強打した様子でミコトが呼びかけても返事がない。  やがて、ストレッチャーを押して救護班が到着した。  数名の救護班職員を残してストレッチャーに乗せられ、運ばれていく那美の後を追おうしていたミコトの腕をイヴはつかむと。  ミコトの顔を凝視してから残っていた救護班の一人に言った。 「この男子生徒のブースター適性検査をして……今すぐ」 「えっ、でも……」 「簡易検査器の端末なら制度は多少劣るけれど、救護班は携帯しているはずでしょう……調べてみて」  イヴは思った。 (ブースターと魂核は一緒に行動している可能性が高い……一か八かの賭け、この男子生徒が魂核だったら……あの負傷した子がブースターであっても、ダメージが高すぎて使えない。この子がブースターだったら……まだ希望がある)  救護班の一人がペン型の器具をミコトの額に近づけると、ブースター適正を伝える青いランプが点滅して電子音が響いた。  驚く救護隊員。 「こんな偶然が……ブースターです! それも強い生命力を秘めています」  指示をするイヴ。 「負傷した天津川那美の肉体に『化生処置』を……ゼロ・オリジンの素体セフィロトは、最初に人間が手を貸さなければ化生覚醒できない」
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