第2章『アポカリプティック・サウンド』

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第2章『アポカリプティック・サウンド』

内戦が続く、とある小国───雷鳴が轟き、狂ったような暴風雨が吹き荒れる夜。  町から離れた森の洋館で白衣姿の一人の科学者が、完成したばかりの巨大人工知能〔Ai〕に向かって両手を広げ問いかけていた。 「わたしを長年の苦しみと苦悩から解放してくれ答えてくれ! 人智を越えた神に匹敵する万能人工知能【メタトロン】よ! 『人類は必要な存在なのか? 不必要な存在なのか?』どちらだ、答えを導き出してくれ」  人工知能メタトロンから電子音が数秒間聞こえメタトロンが、科学者の問いかけに答える。 《人類の歴史から分析した未来予測から出した解答は……動植物と地球環境に害を与え続ける人類は……【不必要な存在】です》  メタトロンが出した答えを聞いた科学者は悲しみの涙を流しながら、複雑な笑いを浮かべた。 「そうか、やはり人類は不必要な存在か」  科学者は、白衣のポケットから古びた写真を取り出して眺める。  写真には数十年前に、内戦で犠牲になった科学者の微笑む妻と、胸に抱かれた三歳前後の娘の姿が写っていた。  科学者が写真の中の妻と娘の名を呟き話しかける。 「ネフィリム、イヴ……もうすぐしたら会えるからな、長い間、待たせたな……さあ、メタトロンよ不必要と判断した人類の排除プログラムを開始しろ、最初に目の前に立つ人間を殺せ! 人類滅亡人工知能【メタトロン】となれ!」  メタトロンから一条の光線が、科学者の額を貫く。  即死した科学者の体が、モノのように後方に倒れる。  電子音だけが不気味に聞こえる空間の中……メタトロンは人類絶滅プログラムを作動させた。 《人類抹殺を開始します》  束になったコード類が通った蛇腹チューブ状の、七本のパイプが地面から引き抜かれる。  まるで終末を告げるようなエコーがかかった金属音が鳴り響く。  洋館が崩壊する、メタトロンは金属アームを出して移動を開始した───人類を滅亡させるために。  メタトロンが最初に人類抹殺を行ったのは近くの村だった。  まったく予期していなかった。突然の機神の襲撃に就寝中だった村人のレンガ造りの家は、閃光で次々と破壊され焼かれた。  メタトロンの動きが止まったのは、村の一番端にあった小屋の前だった。  その小屋の前には、十七~八歳の盲目の少女と、少女を守るようにメタトロンに向かって唸り吠えている成犬の姿があった。  メタトロンが小屋の中をスキャンすると、床に倒れた車椅子を不自由な体で必死に起こして逃げようとしている、盲目娘の母親の姿があった。  目の見えない娘が、吠えている愛犬の首筋を抱き締めながら言った。 「何がいるの? 焦げ臭い、村で何が起こっているの……アイン、あたしはいいから。お母さんの所へ行って、お母さんを守って!」  小屋の中にはから、娘の名を呼び逃げるように促す母親の声。母親にはメタトロンの姿が見えていた。  愛犬アインは、盲目の娘から離れるコトなく、母親と娘を守るかのようにメタトロンに向かって牙を剥き吠える。
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