プロローグ

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プロローグ

 北極圏の高度7000メートル上空を、大型ステルス機が人知れず巡航していた。  その名はCB-22。五十トンの搭載量を誇るステルス戦略爆撃機。この怪鳥はかつて、アメリカ軍の機密兵器だった。  風を切り裂くのは藍色のボディ、バラの紋章は王権派――女王の所有物である証。  CB-22の補助座席に、あたし――ミツキは赤いランプをじっと見つめて、座り込んでいた。この座席は馬鹿でかい爆弾倉の中に、一つだけポツンとついていた。  なんでこんなとこにいるんだろな? あたし。  女王の復活と共に、全世界のあらゆるインターネットと電子機器は、女王の手中へ戻った。最終戦争に備えていた各国は、相次いで女王の元へ降伏した。が、例外も居た。その一つがイギリス軍事政権だった。退役将軍共が作り上げた砂上の楼閣は、権力を握りしめて、北極圏の石油プラントへ籠城した。奴らをただちに無力化し、降伏させよ。その女王の命令を受けたのが、グリフォン隊だった。  爆弾倉にはミサイルの代わりに、四機の戦闘機型ロボット、グリフォンが飛行形態でうつ伏せに係留されていた。  背中に可変翼とジェットエンジンを背負った彼らは、、制空権を握る女王軍の主力戦闘機だ。人間の体を模した身体を持っているけれど、彼らは変形して流線形の戦闘機形態になれる。灰色の薄くシャープな外板は、風を切り裂き空を飛ぶための造形だ。  彼らグリフォン隊はこれから、女王の命令に従い、海上プラントの制圧に臨む。  ……あたしを連れて。
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