ふたり旅

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今夜。 今夜が、約束の日。 わたしは、電気を消したままの自分の部屋で、イスに腰かけてマンガを読んでいた。 コンコン。軽い音が鳴る。 カーテンを開けると、にんまり笑っている顔が視界の全面に飛び出した。 わたしは思わず驚いて、わあ、とのける。 幼なじみのなーちゃんも、わたしと同じようにのけて、クスクス笑う。 わたしがむっとすると、なーちゃんは窓の鍵とリュックを指差して、手招きをした。どうやら、早く来い、ということらしい。 わたしは急いでリュックを背負って、窓を開ける。 びゅおお、と風が吹いた。ガキはこっちにくるな、と叱っているみたいだった。 なーちゃんはそんな風をもろともせず、軽くベランダの柵を越えて歩き出す。 わたしもベランダに用意してあったピンク色のスニーカーを履いて、あとを追う。 なーちゃんとふたり、ひみつの、よるの旅。
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