現実

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 一人の時間は時に苦痛を伴う。不安や焦燥、罪悪感でいっぱいになり、自己嫌悪に陥る。  そうならないために、妻や子どもたちを見送ったあとは、走ったり図書館にいくことにしている。  その日も、まず近くの運動公園へ走りに行った。夏場なので、すぐに汗をかき始めた。  だが、なにか違う。これは走っている時にかく汗とはなにか違う気がする。  冷や汗だ。それと同時に感じる視線。経験がある。夢の中の町の人々の視線と同じだ。  立ち止まり辺りを見渡す。 グラウンドでサッカーの練習をしている中学生それに付き添う保護者たち 自分と同じように走っているランナーたち、みな自分を見ている。 いや気のせいか? いや気のせいじゃない。 見ている。夢と同じような刺すような視線で。
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