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「魔女です。」
「あ、そうですか」と言えるほど私は器用ではない。面食らいながらも、とりあえず聞いてみる。
「城までの道を教えていただきたいのですが。」
「教えてほしい?」
「はい」
「では、一人は残って私の研究を手伝 ってください。」
「研究?」
「なぁに、そんなに難しいことではあ りません。体一つあれば十分です。」
どうするか。私はどうしても『城』に行きたい。しかし、この兄弟を離れ離れにするのは、どうなのか。
「それは・・・」
迷っていると、兄弟の兄の方が言う。
「僕たちは、どちらかが城に行ければいいので、僕が残ります。」
「え、いいの?」
「ええ、そのかわり弟を無事に城まで連れていってください。」
私は逡巡したが、結局その兄の申し出に甘えることにした。
「ではこちらへ。あなた方にはこの地図を差し上げます。」
「兄さん、城に行って戻って参ります。」
「ああ頼んだよ。」
私と弟は地図を受け取り、館をあとにした。
森の出口へ向かう途中に弟から『城』に行く理由を聞いた。彼らは母子家庭で母が病に伏しているらしい。なんでもその『城』にはどんな病も治す薬があるという。その薬を手に入れるために、兄弟はここまでやって来たのだ。
なんとも泣ける話だ。この兄弟の目的が達成されることを願わずにはいられない。私も微力ながら、この子が無事『城』に行けるよう手助けをしよう。
ところで私はなぜ『城』へ向かっているのだろう。
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