嫉妬と劣等感

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 男は饒舌だった。聞いてもいないことをあれやこれや話してくる。 「いやぁまさか一緒に行ってくれる人がいるとは思いませんでしたよ。ありがとうございます。」 「いえ、こちらこそ」 「あなたも招待されたのですか?」 「いえ、私は・・・」 「いやいやこれは失敬。私は、城の主人から手紙をもらいまして。どうしても会いたいとのことだったので、こうして向かっているところです。てっきりあなたも同じかと思いました。何せ、あの城へ好んで行く人はいませんので。」 「はぁ」 「ここで会ったのも何かの縁です。悪いことは言いませんから、あの城へ行くのはお止めなさい。きっと行ってもあなたには退屈な場所でしょう。」 「そもそもなぜあなたは城へ行くのですか?」 「それは・・・」 答えられずにいる私をあきれた顔で眺める男。 「特に用もないのであれば、やはり行かない方がいい。いや、行くべきではない。行く資格がない。」 なぜ初対面の相手にここまで言われなければいけないのか。私は、とても不愉快になった。 「私は城に呼ばれた。つまり主人にとって必要な存在ということです。そして、あなたは必要がない。」 わかった。私はこの男が嫌いだ。 そう思った時、男の足元の階段が崩れ落ちた。
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