水色の眼鏡、真珠色の瞳、茜色のレンズ

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 学校に着くと、いつもの教室に向かい、自分の席に座る。  それは、学校の私という役の始まりの合図なのだ。  例えるなら、女優がカメラの前に立ち、目の前でカチンコを鳴らされ、芝居が始まる、そんな感覚に近い。  まあ、芝居なんてしたことないけど。  クラスメイトの結花が近づいてきた。  さて今日も、私始めようか。  よーい、スタート!カチン。  私は、結花に微笑んで言った。  「結花、おはよう」  結花は満面の笑みで、私に言った。  「おはよう、かすみ」  嫌な予感がした。  結花がニコニコ顔で近づいてくるときは、大抵面倒くさい話をされるのだ。  「聞いてよ!ともくんがね、一緒の大学受けないって言ってきたの。あんなに結花と同じところがいいって言ってたのに」  ああ、いつもの一方的な恋愛相談か。  私が何を言っても、『ともくん、やっぱり私のために』って、良いように解釈して終わるやつね。  私は首を縦に振り、ただただ結花に同意した。  女の子は、話を聞いてほしいだけなのだ。だから、それでいい。  グループには、こういう役回りは必要なのだ。  質問や批判は、麻希や菜緒に任せておけばいい。  そうすれば、問題なくグループに所属していられる。  学校の私はこんなものでいい。自分なんてなくていい。  そう余裕の表情でいると、突然、流れ弾が飛んできた。
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