空へ

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そう思うと自分たちはそこから取り残された者であるようにも感じてしまった。 「有希も見てるんかなあ」 敦史が呟いた。 「それは忘れろって」 拓也が返した。 「これだけ離れてもさ、同じもの見てるやつがいるってことだもんな」 敦史が言った。 「見てるやつって、向こうじゃなくて俺らのことだよな?」 悠太が苦笑いしながら言った。 「まあ、少数だから俺たちのことだな」と敦史が言った。 「あっちのやつらは、これだけ離れたところからも見ているやつがいるって思ってるかな?」 悠太が言った。 「いねえんじゃないか?どうせ花火を見ながらいちゃついているだろうに」 拓也が言った。敦史はうなだれた。 「思っている奴もいるかもな」僕が言った。 対岸の花火は小さいが僕たちにもわかるように綺麗な姿を見せてくれている。 「なあ、さっきのコンビニまで行ってきてもいいかい?」 「何しに行くんだよ?」 「ちょっと買いたいものがあるから」 「何さ?言えよ」 各々が不審な目で僕を見ているのがわかった。 「花火だよ」 「花火?」 「そう。花火」 「なんでだよ?男だけで?」 「そう。空に上がるやつ」 「楽しいのか?それ」 「いいじゃん。あいつもさ、見てるかもしれないから」 「ああ、あいつね」 「あいつか」 「そういうことな」 「そう。あいつにわかるように」 「でも、そのへんで売ってるやつなんて随分しょぼいんじゃないのか?」 「いいじゃん、自分たちしょぼいんだから」 「あ、僕たちなりのってことね」 「そうそう。僕たちなりの」 三人は納得すると、僕はコンビニに向かって車を走らせた。
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