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待ちに待った夏休み。大学生になって初の夏休み。当然、浅田侑平の心は浮かれていた。さて、何をしようかな。ここはやっぱり海だろうか。それとも花火だろうか。友達でも誘ってどこかに行きたいところだ。
「夏といえば」
「やっぱり怪談だろ!な、怪談やろ!!」
一人部屋で夏休みの計画を立てていた侑平の耳に、突如響く爆音のような声。さらに怪談やろうという謎のお誘い。
「あのなあ。何で怪談なんだよ。つうか、お前の存在がすでに怪談だろ?」
侑平は突如現れた久米一生に、冗談は止せと顔を顰めた。しかし、一生はぐぐっと顔を寄せてくる。一体なんだ。
「だからいいんじゃん。みんなが怪談で盛り上がり、さあ、最後の蝋燭を吹き消したってところで俺様の登場。喰われたいのは誰だ~って脅すって戦法だ。素晴らしいだろ?」
「いや、素晴らしくない」
なんだその謎の状況と、侑平は首を捻るしかなかった。しかしまあ、蝋燭を吹き消すって古典的な。
「ええっ。面白いじゃん。やろうよ。人間って面白いよな。いないって思ってるのか、いるって思っているのか。物凄いびっくりしてくれる」
一生は悪戯したいよ~と、畳に寝転んで駄々をこねる。そう言えばこいつ、悪戯好きの鬼だった。
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