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「でも、やらない」
しかし、一生の悪戯に加担するつもりはないので、きっぱりと言っておく。すると、一生がぶすっと膨れた。だが、可愛くない。一生の見た目はチャラ男だから、ただただいかついだけだ。
「男が膨れて許されるのは、可愛い系の顔の奴だけだからな」
「ちぇっ。やろうよ。お前のその豊富そうな経験を生かして」
「嫌だから。つうか俺、妖怪で驚かないから怪談経験はない」
「そうでしょうねえ」
侑平がきっぱりと否定したところで、麦茶を持った薬師如来が現れた。そして二人にコップを配る。
「はい。熱中症には気を付けてください」
「ありがとうございます」
相変わらず素晴らしい気遣いと、侑平は受け取りつつ感心してしまう。このご本尊、優秀過ぎるのだ。
「そうか。侑平って俺たちに好かれるタイプだもんな。そしてこいつ、冷静だから驚かねえんだった」
一生は受け取った麦茶を一気飲みし、何だ面白くないと腕を組んだ。せっかく悪戯できるチャンスだと思ったのに残念。
「そういうこと。やっぱり夏だから海かな」
ようやく一生が大人しくなったので、侑平は普通の夏を考えられる。しかし、現実はそれを許してくれない。
「海か。ここは海坊主に声を掛けるべきだよな。あいつも侑平に会いたがっていた」
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