真夜中

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ある夏の真夜中、私はひんやりとした風を感じて目を覚ましました。部屋の窓を開けたままにして眠っていたのです。最近は蒸し暑く、眠りづらい夜が続いていました。しかし、その日はひんやりとした風が心地よく夜を包んでいました。 私は、緩慢とした動作で枕元に置いていたシャツに着替えると、台所に置いてあった果物をいくつか鞄に入れてこっそりと家を抜けだしました。 私は夏の日の真夜中、涼しい夜に限って動物たちが森で宴を開いているのを知っていたのです。 自転車に乗り、裏山に向かっている途中、涼やかな風が私の頬を撫でました。夏の日の夜風はどこか甘い匂いがします。 森に着くと、私は茂みをどんどん進んでいきました。普段は暗い森の中でも、動物たちの宴がある日には問題なく進むことができます。私の友人の狐たちが夜道を照らしてくれるのです。この狐たちは発光狐といって、特別な夜にだけ美しい光を体内に灯すのです。狐たちの体を通過した光は暖かい色をしています。 茂みを抜けるとお馴染みの動物たちが待っていました。私は手土産の果物をくまさんに渡すと、彼の隣りに座りました。くまさんは動物たちのリーダーなのです。 狐たちの発する明るい光のなかで、私たちは宴を楽しみました。 うさぎさんの作ったサンドウィッチや、ねずみさんの作ったブドウジュースは皆を喜ばせました。 動物たちのにぎやかな宴は続いていきます。動物たちに手土産を持っていきますと、人間であっても仲間に入れてくれます。だから、皆さんも動物たちの宴に参加するときは手土産を忘れずに。
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