第1章 エンゲージ

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 濃紺の制服に身を包んだその背丈は150センチそこそこか。だが、その顔を見て絶句した。人形みたいに整っているが、どこか幼い印象の少女。その瞳は紅く、肌、髪は雪の様に白い。 (アルビノか・・・・・・)  表情の無い可憐な少女の紅い瞳と目が合い、つい視線を反らす。 「紹介するわ。こちらウチの新人、イーリス・ルシャノスカ少尉や。面倒見たってや!」   沈黙をハゲのダミ声が破ったが、再び沈黙する。  こちらから名乗ろうかと思った時、目の前の少女が口を開いた。 「・・・本日付けで第16飛行隊に着隊しましたイーリス・ルシャノスカ少尉です。よろしくお願いします。」  高く透き通った声。抑揚が無く、落ち着いた印象。大人しい性格か。 「クールな性格と聞いとるわ!まぁ、お前らしっかり教えたるんやで?ワシは今から会議やから失礼するで。ほな、またな!」  笑いながらハゲ・・・隊長が部屋を後にする。3人に再び沈黙が走った。  バリバリバリバリバリバリッ!!!!  窓の外に視線をやると、グレーの制空迷彩のF-16がフォーメーション・テイクオフで北の空へと消えた。風が吹き込み、少女、ルシャノスカ少尉の長く白い髪が舞う。 「では、我々が案内しよう。行きたい場所は無いかな?」  真横からイケボ、クルィークが案内を提案していた。最も、鼻の下が完全に伸びきっているが。 「・・・・・・では、ハンガー等の案内をお願い出来ますか?」 「お安い御用だ(キリッ)」  鼻の下が伸びきった状態で器用にイケボを発するクルィークに対し表情を変えず、ルシャノスカ少尉が申し出た。  ・・・せめてもうちょい表情に出すなよな。  ご機嫌なクルィークを尻目に苦笑した。  第1章 完
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