第2章 ティガー

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 SIDE “ソーン” 「えーと、ここが食堂な。うちの基地は士官用とか下士官とか無いから。全員ここな。で、こっちがBX(売店)で、こっちが・・・」  ルシャノスカ少尉の頼みで、クルィーク主導で基地を案内して回る俺達。 「ここ、ノルトヴェルグ基地が前線基地ってのは聞いてるだろ?居住地区かなりコンパクトだから、移動が苦じゃないのが強みだぜ!」  コンパクトとは言え、飛行場地区はかなり広大だ。現在、クルィークが運転するハンヴィーで、ある所に向かっている。  運転席にクルィークと助手席にルシャノスカ少尉。後席の俺は窓の外を眺めていた。フェンスの外側には広大な麦畑と、向日葵畑が広がっている。まだ6月だ。開花するのはもう少し先の事になる。 「っていうか、ルシャノスカ少尉さぁ・・・TAC ネームは?」  クルィークが頬杖を着きながら訊く。戦闘機操縦士の空における2つ名だ。 「・・・・・・イルビスです」  雪豹かー 「ティガー隊所属で雪豹か・・・。猛獣繋がりやな」 「多分、たまたまだと思います」  俺の呟きに、背中越しに反応する。 「さて、着いたぜ」  そうこうしてる内に、最初の目的地に到着した。  降車した場所から、前方に広大な空間が広がっている。ランウェイ・エンド(滑走路末端)に繋がる誘導路の端、その一角に4棟の小さなカマボコ型のハンガー(格納庫)が2棟ずつ、僅かに距離を置いて設置されている。2つくっついたハンガーの真ん中に、小さな詰所のような建物がある。 「お疲れーッス」 「「おっつー」」  ソファーに、腰掛けているフライトスーツ姿のパイロット2名と、整備員達が寛いでいる。 「イルビス。ここ、どこか解るよな?」 「・・・アラート・ハンガーですか?」 「正解。実際入るのは初だろ?」  教育中のクルィークを横目に見ていると、現在上番中のパイロットの内、片方が訊いてきた。 「ソーン、随分可愛い新入り入ったな。整備?」 「ーと、思うっしょ?アレ、パイロットッスよ」 「えーマジで~?」   軽く話している最中だった。  プルルルルルルル!  内線の着信ベルが鳴り響いた刹那、待機室の全員が一瞬で電話に向いた。電話を取った当直から発せられる号令を待つように。  「スクランブル!!」  当直が叫ぶと同時に、壁の状況表示灯が、黄色に発光する。 ≪BST≫  バトルステーション待機ー。  その場に居たパイロット、整備員の全員が左右両ハンガーに向け、疾走した。  
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