第2章 ティガー

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「ーアイツらの向かう先は“戦場”だ」   2機のF-16が向かう方向の空を仰ぎ見るイルビスに言う。その表情からは緊張も興奮も感じ取れない。ただただ、無表情だ。 「行くか。相棒に会いに。」  珍しく真剣な眼差しでクルィークがハンビーを顎で指した。  掩体地区  車を走らせること4分、針葉樹に囲まれたエリアを走っている。それは森にしか見えない。だが、確かにそこに目的地が有った。 「着いたぜ」  森の中の道を進み、ある場所で停車した。 正面と左右に別れた道にそれぞれ一つずつ、濃緑色に塗られたカマボコ型の建物が森にひっそりと佇んでいる。 「ここが、俺達の“相棒”の家だ。お前の相棒は、真正面の第2掩体に入ってる。」  掩体ー通称、シェルター。戦闘機を1機ずつ個別の壕に入れることにより、爆撃に有った際の被害を最小限に食い止めることが出来る。その抗堪性は高く、爆風等に対しては、通常のハンガーよりは、確実に強い。 「パスワードは、“20080514”な」  扉付近に設けられたボックスを開き、パスワードを入力・・・オープン。  ガチャンッ  重い扉が左右に開き、カマボコの中に鎮座する者が姿を見せた。  SIDE “イルビス”  濃緑色のドアが左右に開き、暗いトンネルのような空間に巨大な鳥の様なシルエットが浮かんだ。 「ー私の機体・・・」  この基地に連れて来た愛機、Su-35Sフランカーが姿を見せた。 「威圧感が凄い・・・」 「ウチの基地にフランカーは居なかったからなー。地上でまじまじ見ると凄くでかい」  先輩達が感想を漏らす。実際私自身、シェルターに入れられたこの子は初めて見る。通常のハンガーに比べ、遥かに小さなシェルターと比較して改めて自分の機体の大きさを重い知った。 「機付長はどちらへ?」 「中に居ると思うよ。リュークー!!居るー!?」 「・・・・・・はーい!!」  クルィークさんの声に反応し、どこからか声がした。機体後部の方から人影が近づいてくる。  灰色ベースの非常に細かいモザイク模様が入ったツナギ姿の整備員。少年と言った方が良いような外見の彼がはにかみながら近付いてきた。 「紹介するぜ。こちら、リューク・ウラジーミロヴィチ・カルツェフ上等兵だ。天才メカニックだぜ!」 「イーリス・ルシャノスカ少尉です。よろしくお願いします」  はにかむ整備兵に一礼する。  今後、私は彼に命を預けるのだ。
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