45人が本棚に入れています
本棚に追加
「宜しくお願いします少尉。貴方の35Sはお任せ下さい。しっかりお世話させて頂きます。」
表情に幼さが残る整備士は、誓うように私に言う。その瞳には、鋭い光が差していた。
「管制はー行かない方が良いかな。邪魔してはマズイし。」
掩体を後にした私達は、基地内を再び回っていた。
「あそこの建物が消防。今後予備消防要員勤務もあるから、招集掛かったらあそこな。横が警備のショップ。この基地は、陸軍ベンスレット駐屯地第16歩兵連隊からローテーションでやってもらってるよ」
「ー空軍基地守備兵は居ないのですか?」
大概の空軍は空軍基地守備兵が存在し、敵からの侵入を防いでいる。
「居ないよ。」
陸軍の緑色のデジタル迷彩服を着用した兵士を乗せたオートバイとすれ違った。ほんの僅か一瞬、鋭い眼光が私達を睨み付ける様に一瞥した。
「アイツ元気かなー“フレイ”」
「元気だろ。南の夜空でのんびりフライトだろ?俺もあっち希望したんだけどなーイルビスは何処の基地希望した?」
「ー私達は、希望とか有りませんでした」
どうやら傭兵は任地希望が出来たらしい。士官学校を出た正規将校である私と違い、二人の飛行服には階級章が無い。
「ーお二人は、同期なのですか?」
「まぁな。コイツとは戦闘機操縦課程で合流した。同い年の日本人が一つの期別で四人居る変な期だったな。」
ソーンさんがクルィークさんを指す。
「クルィークさん、日本人だったんですか?」「見えないよなーやっぱ」
金髪碧眼のその顔立ちは完全に白人のものだ。
「両親がロシア人だったんだけど、二歳の時事故でなー。日本人の下で16年育てられたし、完全に日本人だよ。海上自衛官やってたし。」
・・・・・・。
「すみません、失礼しました」
「気にすんなって。」
笑いながら、少し遠い目をするクルィークさん。本当はあまり訊いて欲しい内容では無いのかもしれない。
「“フレイ”から何でこの話なったっけ・・・?まぁ、良いや。ってか、何で“フレイ”の話題に」
「基地守備兵士の話題からだろ。懐かしくてつい思い出した。アイツも空自で基地警備やってたしな。」
思い出話に花が咲く先輩達。傭兵と言う道筋を経てやって来てる以上、やはり母国の軍隊は出てるのだろう。確か日本では、自衛隊とか呼ばれていたような・・・。
「さて、イルビス。」
「はい。」
急に真剣な声音に変わる。
「明日、0800ブリーフィングルーム集合。」
最初のコメントを投稿しよう!