第2章 ティガー

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「宜しくお願いします少尉。貴方の35Sはお任せ下さい。しっかりお世話させて頂きます。」  表情に幼さが残る整備士は、誓うように私に言う。その瞳には、鋭い光が差していた。   「管制はー行かない方が良いかな。邪魔してはマズイし。」  掩体を後にした私達は、基地内を再び回っていた。 「あそこの建物が消防。今後予備消防要員勤務もあるから、招集掛かったらあそこな。横が警備のショップ。この基地は、陸軍ベンスレット駐屯地第16歩兵連隊からローテーションでやってもらってるよ」 「ー空軍基地守備兵は居ないのですか?」  大概の空軍は空軍基地守備兵が存在し、敵からの侵入を防いでいる。 「居ないよ。」  陸軍の緑色のデジタル迷彩服を着用した兵士を乗せたオートバイとすれ違った。ほんの僅か一瞬、鋭い眼光が私達を睨み付ける様に一瞥した。 「アイツ元気かなー“フレイ”」 「元気だろ。南の夜空でのんびりフライトだろ?俺もあっち希望したんだけどなーイルビスは何処の基地希望した?」 「ー私達は、希望とか有りませんでした」   どうやら傭兵は任地希望が出来たらしい。士官学校を出た正規将校である私と違い、二人の飛行服には階級章が無い。 「ーお二人は、同期なのですか?」 「まぁな。コイツとは戦闘機操縦課程で合流した。同い年の日本人が一つの期別で四人居る変な期だったな。」   ソーンさんがクルィークさんを指す。 「クルィークさん、日本人だったんですか?」「見えないよなーやっぱ」  金髪碧眼のその顔立ちは完全に白人のものだ。 「両親がロシア人だったんだけど、二歳の時事故でなー。日本人の下で16年育てられたし、完全に日本人だよ。海上自衛官やってたし。」  ・・・・・・。 「すみません、失礼しました」 「気にすんなって。」  笑いながら、少し遠い目をするクルィークさん。本当はあまり訊いて欲しい内容では無いのかもしれない。 「“フレイ”から何でこの話なったっけ・・・?まぁ、良いや。ってか、何で“フレイ”の話題に」 「基地守備兵士の話題からだろ。懐かしくてつい思い出した。アイツも空自で基地警備やってたしな。」  思い出話に花が咲く先輩達。傭兵と言う道筋を経てやって来てる以上、やはり母国の軍隊は出てるのだろう。確か日本では、自衛隊とか呼ばれていたような・・・。 「さて、イルビス。」 「はい。」  急に真剣な声音に変わる。 「明日、0800ブリーフィングルーム集合。」
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