第2章 ティガー

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 0800、ブリーフィングルーム集合・・・。 「まだこっちの空、地形については、事前に調べた程度にしか解んないだろ?空域慣熟訓練をやるぜ。飛行服で集合な。では、お疲れ。」  停車した場所は、女子宿舎の玄関前だった。今日はこれで解散らしい。 「ありがとうございました。明日から宜しくお願いします。」  私の一礼に、手を振りながら走り去る。  宿舎の部屋には既に案内されていた為、場所は解る。三回まで階段で上がり、長くない廊下を突き当たりまで進んだ。自室のドアを開く。 「・・・・・・・・・」  机や冷蔵庫は有るが、入居してすぐの為か、殺風景な部屋。部屋の中央に郵送してもらった段ボールが一箱置かれている。元々、私物はほとんど持ち込んで無かった。これからいろいろ買い足さなくてはならない。 「・・・明日から、始まる・・・」  これまでとは違い、現場の空での勤務。習得しなくてはならない事は山のように有るだろう。少なくとも、TR(トレーニング・レディネス)要員からAR(アラート・レディネス)要員になるまでは、戦闘機パイロットと名乗る気になれない。 「気負い過ぎも駄目・・・・・・」  自分に言い聞かせる様に呟く。まずはシャワーを浴びて、汗を流そう。長旅の疲れは今夜の内に取っておきたい。  SIDE “クルィーク”    平日の夜にも関わらず、街のパブはカップルで賑わっている。そんな中、相棒が若干不機嫌そうに食事している。 「ビクトル、遅かったじゃない。待ちくたびれたわよ」 「すまないな僕のヒヤシンス。今日も砂漠のオアシスに咲く1輪の薔薇のように美しく、愛らしい・・・・・・」 「んもう、アナタったら・・・・・・」 「今夜は寝かせないぞマイ、スイートピー・・・・・・」  横で歯の浮くような発言をしてイチャつくカップルを横目にソーンの表情がみるみる不機嫌になった。 「ヒヤシンスなのか、薔薇なのか、スイートピーなのかハッキリしろやクソリア充が」 「やめとけよ。日本語理解したらどうすんだ」  空気が悪い。 「今日カップル率高くね?お陰で落ち着いて飯食えねぇし」 「気にしたら負けだよ」  苦笑しながら、ご機嫌斜めのソーンのグラスにレモネードを注ぐ。俺も今日は呑まない。明日は飛行訓練だ。 「にしてもイルビスの件、OJT有るとは言え、もうARで良くね?充分飛行技術高いだろ」 「それな。今戦時下だし、すぐにでもOR行けるだろ。多分」  
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