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エプロン地区
飛行装具を装着し、エプロンを歩く俺達。真横のイルビスは、既にメットを被り、バイザーを下ろし、マスクを装着という肌を一切露出させない状態だ。アルビノという体質のせいだ。色素を持たない彼女の身体に、太陽光は余りにも有害過ぎる。
「お願いします!!」
L-39の機付長に敬礼し、申し送りを受ける。普段連絡用や、ちょっとした飛行訓練用に運用している練習機だ。60年近く前の設計の機体ながら、信頼性、運動性全てが一級品だ。
申し送りを受けた次は、操縦士自ら行う外部点検。整備士が最高の状態を維持してくれて居るのだろうが、結局最後に飛ばすのは自分自信だ。全体をくまなく見て回る。
「よし、OKだ。さて、乗るか!」
「はい。」
イルビスを前席に乗せ、後席に座る。イグニッション・スタート。
シュィイイイイイイインー
甲高いタービン音、アルバトロスの名を冠する怪鳥が眼を醒ます。MiG-29のような勇ましさを感じさせる目覚めとはまた違った趣が有る。単発機だけあり、立ち上がりからミリタリーに入るまでが速い。
「ヴェルグタワー,ティガー01.クリアーフォータキシー」
≪ティガー01,ヴェルグタワー.ウィンド090アット3.エンドに入ったらそちらのタイミングで上がれ.ランウェイ07,クリアードフォー・テイクオフ≫
「ランウェイ07,ティガー01,ラジャー」
タキシングし、ほどなくして、ランウェイに入る。
「イルビス、ユーハブ・コントロール。普通に離陸しろ」
「ーアイハブ・コントロール。了解しました」
操縦桿とスロットルから手を離し、前席のイルビスに操縦を任せる。現在ランウェイ上、オレンジ色のセンターラインに機軸を合わせた状態で静止している。
足の間の操縦桿(スティック)が勝手に動くと同時に、舵面が動く。最後のチェックか。
キィイイイイイイイイイン!!
エンジン音が高鳴ると同時に加速により生じたGが、身体をシートに押さえ付ける。エンジン回転数と速度計が上昇する。
230・・・240・・・250・・・
250キロに達した時点でイルビスが機首を引き起こした。ピッチ15度。軽やかに機体が浮く。ギア、フラップ共にアップ。下界が小さくなり、背中に遠ざかる。ファルクラムに乗ってるときはなかなか見れない。
視界には蒼が広がっている。
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