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3000フィートに差し掛かる手前でピッチを小さく修正していく。ぴったり、3000で水平になった。上手い。
「左見てみ?」
フィヨルドの遥か向こう側に広がる雄大な山脈。急峻な山々の頂は白く染まっている。
「レイヴェン・アルプス。あの山脈の向こうはアルフィリオだ。」
山脈の向こう側の敵国。だが空は2つと無く、全て繋がっている。
「ー綺麗・・・」
「だろ?これが俺達の空だよ。」
感嘆の声を漏らす後輩に、先にこの空を闊歩する者として、少し得意気に返した。
「ーさて、現方位、現高度を維持。しばらくこのまま道なりな」
SIDE “ソーン”
ああ、ツイてない・・・・・・。
「聴こえとるで?なんか有ったんか?」
口に出てたか。
「イルビス、やっぱエエセンスしとるわ。お前ら、油断したらアカンで?ACMで勝てんようなったら、先輩としての顔立たんやろ」
「傷エグん無いで下さいよ・・・」
いやもう、本当にツイてない。何がツイてないって、このおっさんの後席に座らされてる事だ。
俺は今、オレンジと黒の虎縞の馬鹿に目立つMiG-29UBの後席に座らされてる。隊長の愛機、MiG-29UB練習複座型ファルクラム、シリアルナンバー1632番、通称「トラちゃん」。連絡機兼練習機だが、あまりにも使い道が無いため、隊長が好きに使っている機体。
「アイツとやった感じはどうやった?」
「・・・・・・機動にはまだまだ無駄が有りますが、優秀です。でなければ、クルィークが殺られはしません」
「せやな。ま、お手並み拝見や。」
前席で隊長が、舌なめずりしたような気がした。
「よう掴まっとけや?」
「イジェクト(脱出)して良いッスか?」
「アカン」
・・・・・・やれやれ。いよいよ遺書が役に立つかな?
鼓動が昂る。興奮などではない。恐怖と緊張だ。嫌な汗が滴った。
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