第2章 ティガー

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 SIDE “クルィーク”  頭上に虎の背中が見えた。撃墜・・・・・・誰もがそう思うだろう。レオのオッサンを知らなければ・・・だ。  グンッ!!!!  一瞬の事だ。虎のファルクラムの機首がほんの僅かな瞬間で、機首を向けてきた。 「ー!!」  2基のインテークの上に乗っけられたような細い機首が、進行方向を無視して俺達を睨み付ける。  ごくごく短時間の間、レオのオッサンが操るファルクラムは、空中に倒立した。「降下しながら」。 『FOX3』  殺られた。実戦なら30ミリ機関砲弾を撃ち込まれ、一瞬にして砕け散っただろう。  オーバーシュートするL-39。機首を本来の進行方向に戻したファルクラムが2回エルロンロールを打ち、急上昇する。ビクトリーロール。  グッ  頭上からGが押さえつけてくる。海面が近付いてきた。 「レオさん?どういう了見ですか?」  基地のエプロン上に戻った俺達を出迎えたのは、笑顔の裏に真っ黒なモノを漂わせるリュークだった。 「ありゃ相当お怒りだな」 「自業自得だろ。」  フラフラのソーンが不機嫌そうに言う。 「スパイラルダイブ中に急激なコブラやりやがって・・だから一緒に乗りたくなかったんだ・・・」 「・・・お疲れ・・・・・・」  コブラ機動・・・超低速飛行時にAOA(迎え角)リミッターを解除し、急激な機首上げを行うとSu-27等の機体は空中に機首を上げたまま1、2秒静止できる。その様子を鎌首を上げるコブラに例えた機動。最も、コブラ機動中は舵が利かない上、MiG-29が出来る機動ではない。飛行技術で飛行領域を強引に拡大しているのだ。 「10Gオーバーしたからな」 「よくそれで済んだなー」  ドス黒い笑顔を浮かべるリュークに頭を下げて平謝りするレオを尻目に、イルビスを見る。彼女の白い肌は内出血の影響か、赤くなっている。少々不機嫌そうな表情だ。 「すんまへん!ホンマ、スンマヘン!!申し訳ない!!」  リュークに平謝りのレオに目もくれず、虎柄のファルクラムを眺めている。
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