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イルビスじゃない。明らかに違う声。低くはないが、押し殺したような声だ。その上はっきりと日本語を話した。
『ー久しぶりだ。日本人と飛ぶのは・・・』
「ー誰だ?何者ー」
問い掛けた瞬間
パッー
左手真横に居るアンノウンが衝突防止灯を点灯した。垂直尾翼に狼の様な紋章が浮かぶ。
「ー!?」
『ソーンに宜しくと伝えろ』
ーコイツ、何でソーンを知って・・・!?
「誰だお前!?」
『ガル。では、また近い内にー』
ドンッ!!
イーグルがバーナー火炎を噴き、右に大きくバンクを取った。
「待てや!!」
バーナー・オン。追尾する。流石はイーグル。加速力が凄まじい。
「・・・ハッ・・・ウチの国はこんなの200機も所有してんのか」
緩やかな右旋回。イーグルの加速は止まらない。方位015で水平飛行に移ったのが見えた。そのまま飛び去る。
「ー速いな。やっぱ・・・」
闇に赤い火炎と衝突防止灯が流れていく。
≪グール、帰投せよ≫
「グール、ラジャー・・・。コンプリートミッション。RTB。」
ーリターン・トゥ・ベースを告げ、機首を反転させた。
「ーガル?誰それ」
「は・・・?お前の知り合いじゃないの!?」
PXで買ったであろうカボチャプリン片手にPCゲームに勤しむ相棒は、素で知らない様だった。
「そもそも、知り合いの日本人戦闘機パイロット自体、この国の傭兵以外居ないけど?」
「でも、お前のTACネームハッキリと呼んだぞ?」
「ー怖ッ・・・」
わりと素の反応だ。何かを隠しているようにも見えない。
「同期にしては変だよ。お前の同期=俺の同期じゃん?」
「だよなー」と言いつつ、カフェインドリンクに手を付けるソーン。恐らく一睡もしてない。順調に寿命を削っている最中だ。
「・・・・ってかさ、イルビス凄くね?」
「はい?」
いきなり振られて少し驚いた表情を見せたイルビス。
「闇夜でよく見えたよな。相手がイーグルって。IRで機種解ったとかじゃなくてマジで見えたんだろ?」
「はい。輪郭が見えてました。」
「デビューで今回ぐらい対処できれば大丈夫なんじゃない?」
彼女の表情は相変わらず無表情だが、まんざらでも無い様子だ。妙なデビュー戦になったが、相手機を識別という役目は果たした。デビューとしては、良好と言えた。
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