第2章 ティガー

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 その後、15飛行隊のF-16乗り達も合流し、空戦談義に更に華を咲かせる事になった。      SIDE “UNKNOWN”  暗いー何も見えない。入り口は遠く、振り返っても遥か遠く、進む先には何も見えない。何が有るか解らない。ただ、ただひたすら暗い闇の中を歩いている。 「ー!!」  誰かの名を呼んだ。返る訳もない返事。誰を呼んだかも解らない。とにかく誰かだ。  誰か応えてくれ。俺はここに居る。呼んで居るんだ。お願いだ、誰かー  視界が暗転する。手に握る無機質な硬いもの。これは操縦桿ー?  左手にも何かを握っている。・・・知ってる。スロットルだ。  シュコーッ・・・シュコーッ・・・シュコーッ・・・  レギュレータの音、口許にマスクの感触が有る。頭部に違和感。メットを被っているのか。 「ーッ」  視界が光を取り戻した。コックピット。 大量の時計型計器と正面にHUD。  下に沿岸線が見えた。芦屋の沿岸線だ。前方に津屋崎の半島。その向こう側に海の中道、そして福岡市が見える。視界は良好。  右斜め前方に赤と白に着色された丸みのあるシルエットが浮いている。編隊長機。芦屋基地13教団所属のT-4だ。  『レフトターン・・・・・・ナウ』  編隊長機の合図で左方向に旋回した。大地が90度傾き、視界の左半分が地上、右半分が空になる。  若松の半島、北九州八幡の市街地が見えた。遠くに本州が見える。  編隊は芦屋基地に陸側から進入し、玄海灘へと通過した。再度、同じ飛行コースに乗る。  フラップダウン、ギアダウン。減速し、150ノットほどで進入する。ランウェイ・エンドに吸い込まれるかの様に降りていく。  主脚が路面に当たった。その瞬間ー 「ーッ」  再び視界が闇に包まれる。  なんなんだよ、一体・・・    戻る視界、そこは見知らぬ天井。病院ー?いや、違う。ここはー 「見知らぬ所・・・じゃねえ。ここはー」  そして再び眠りに落ちたー。
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