第3章 フランカー

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「ざっけんなや!!」  バシュッ、バシュッ、バシュッ  赤外線欺瞞用の囮、フレアを放出した。非常に強力な光を放つ。夜間なら至近距離で焚けば目眩ましにはなるはずだ。  ピッピッピッピッー  警告音が途絶えた。狙い通り。ホーネットは、光に怯んだ瞬間に旋回を緩めただろう。それが命取りになる。  頭上にホーネットのアフターバーナー火炎が見えた。この状況なら旋回性、加速共にこちらが優位。  ヘルメットに取り付けたHMS(ヘルメット・マウンテッド・システム)でホーネットを睨んだ。  ピィイイイイイイイイ!!  不快な電子音が響く。この機に搭載してあるR-73短距離空対空ミサイルが敵機の熱を完全に捕捉した。  トリガーに指を掛ける。 「・・・・・・・・・・・・いや・・・」  一瞬浮かんだ思考で躊躇った。  コイツら・・・・・・本当に闘う気あるのか?  解らない。だが・・・ 「向こうが撃つチャンスは幾らでも有った。なら・・・」  そのまま眼下の山肌に向けて降下する。暗視ゴーグルによって緑色の表示された急峻な山の岩肌が迫る。  スティックを引く。 「・・・・・・ッ!!」  腹を掠りそうな距離まで接近しただろう。 緑色に表示された岩肌が物凄い速さで後方へと流れる。岩肌を舐めるように飛行している。いつ接触してもおかしくない飛び方だ。  バックミラーに視線を上げた。ー追随して来る。流石は山岳飛行のスペシャリスト共だ。  ー前方、尾根がある。  軽くスティックを引き、ベクトルを稜線に合わせた。鋸の様な稜線が迫る。 「ーナウ」  自分に合図し、背面になる。落ちようとする機首を、スティックを軽く圧しながら稜線に保った。  凄まじい速度で接近する稜線が背面になり天地逆転した頭上をあと一歩で擦る様に通過する。山頂に1輪の花でも咲いていたら見えていたかもしれない距離だ。  尾根を越え、頭上ー下方に谷を視認、スティックを勢い良く引いた。降下しつつ、背面から水平のバンクに戻す。後方、ホーネット2機。ロックオンされてない。だが、接近されれば機関砲の射程内に入ってしまう。  前方が谷になっている。そのまま突っ込む。    
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