第3章 フランカー

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 耳障りな電子音が、ホーネットの排気をSRMのシーカーがロックしたことを告げる。スティックのトリガーに指を掛けた。  『おい、ファルクラム』 「!」  2機のホーネットが密集編隊を組む。 『すまないが、フューエルビンゴ(残燃料わずか)だ。カーチェイス楽しかったよ。ではまたな』 「なっ・・・待てや!!」 『待ってやろうか?』  言い残し、一糸乱れぬ密集隊形で右旋回していく。相当な技量であることが伺えた。  そのままアフターバーナーに点火し、離脱していく。 「ビンゴかよ・・・・・・もう少しで撃墜出来たのに・・・」  言いつつ、燃料計に目線を落とす。ー駄目だ・・・こっちも余裕が無い。暴れすぎた・・・。 ≪アックス02、ヤシュオ編隊離脱、お前も帰投しろ。残燃料は?≫  コントロールからの無線。 「余裕無し。あと5分フルバーナーでACMやったらギリギリ帰れるか否か。」  ファルクラムは小型の前線防空用の軽戦闘機だ。燃料搭載量はかなり少ない。  左方向に倒し、そのままノルトヴェルグに機首を向けた。 「・・・ん?」  右ミラーに影が写った。 「イルビスか・・・」  大きな全幅の主翼に双尾翼。Su-35Sフランカーだ。右斜め後方30メートルくらいの位置に浮いている。   すーっと近付いてきた。敵では無いとは言え、大型戦闘機の威圧感も相まって、あまり気持ちの良いものではない。右主翼下に潜り込んできた。そのままゆっくりと左主翼下に滑らせていく。ーうまい。速度、進路そのままにゆっくりと機体を滑らせた。 『外観グリーンです』 「悪い、ありがとう」  気を遣わせてしまってたか。    基地まで10分程度。火山灰がキャノピーに傷付けないか心配になったが、今のところは問題ない様に見える(暗視ゴーグル越しのため、なんとも言えないが)。  
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